炭酸ガスがクーラントのドライ切削加工
CNCフライスやマシニングセンターで、クーラントとして二酸化炭素を適用する技術が、従来の水溶性切削油やミストに代わる冷却・潤滑・洗浄技術として注目を集めています。
特殊なノズルから放射する液化炭酸ガスには、極めて高い洗浄能力と冷却・潤滑効果があります。
従来のエアーブロー・切削油・ミストによる冷却の代わりに、CO2スノーを適用することで、被削材と工具の潤滑・冷却を行うだけでなく、洗浄までをドライプロセスで行う効果があります。
CO2スノージェット洗浄装置
ACP社 が開発したCO2スノージェット洗浄装置は、ノズル1本を搭載したスタンダードモデルを ”ジェットウォーカー”という名称で販売しています。CNCフライスやマシニングセンターにも適用できる技術です。
取扱代理店 ㈱ケー・ブラッシュ商会
CO2スノージェット洗浄装置は、ユーティリティーに液化炭酸ガスを使用します。二酸化炭素は、ケミカルプラントや石油精錬プロセスで、生産過程で必然的に発生する副産物です。CO2スノージェット洗浄装置は、副産物として生成される二酸化炭素をユーティリティーに用いて、それをブラストしますので、全体でみると二酸化炭素の量は増加しない環境的に中立です。
液体の二酸化炭素は、ノズルから放射すると結晶(CO2スノー)になります。CO2スノーは、ノズルからのジャケットエアにより超音速でブラストします。特許取得すみのノズルによるジャケットエアがマイナス78.5℃のスノーを定圧で加工点に放射して、極めて高い冷却効果を生み出します。放射するCO2スノーは、必要最小限に制御します。
潤滑・冷却・洗浄がドライでワンプロセスに!
ノズルから放射された固体状態の二酸化炭素(CO2スノー)は、常温で昇華する性質があります。微小なドライアイスは、対象物に当たると切削熱を吸収して、直ちに空気中に昇華します。この特性により、二酸化炭素は表面に液体で残留することがありません。ドライで冷却することが可能になります。ドライで切削加工を行うので、切削加工と洗浄をワンプロセスに集約できる可能性があります。加工後に必要な清浄度により、切削加工の後に必要な洗浄装置を別途用意することがあります。
また、CO2スノーは、常温・大気圧では、最終形態は気体です。ノズルから噴霧したCO2スノーは、表面に衝突すると直ちに気体になります。この性質が、廃液処理を不要にしています。
CO2スノーのブラストには、切りくずの除去能力が高い特徴があります。切削加工中に発生する切りくずは、工具への巻きつきや切削熱による溶着の原因になり、工具寿命の低下やダウンタイムの増加につながります。
CO2スノーは、切削加工中の被削材と工具を冷却して切削熱を除去します。そして、切りくずを氷の結晶(スノー)によるブラストで除去して潤滑を促進します。CO2スノーは、工具と被削材を常にドライ洗浄するので、工具の寿命が長くなり、生産コストの低下につながります。
CO2スノーを噴霧するノズルをロボットに持たせて、無摩擦で毒性の無いブラストを切削箇所にのみ焦点をフォーカスして放射することが出来ます。工具と一緒にノズルを移動させることができ、必要な箇所に正確にCO2スノーを供給することが出来ます。
CO2スノージェット洗浄装置は、モジュールデザインです。設置スペースは最小限です。ブラストの強弱は別置きコントローラーで調整します。パラメーターを調整できるので、いろいろな用途に柔軟に対応できます。
主な用途
CO2スノージェット洗浄装置を適用したドライ切削加工は、PEEKの切削加工では更なる利点があります。
PEEKは、ポリエーテルエーテルケトンの略称です。高い機械的強度、耐熱性、耐薬品性、X線透過性が良いエンジニアリングプラスチックです。このため、治療のために人体に埋め込んで使う器具”インプラント”という用途があります。インプラントのような医療用器具は、細菌の繁殖を防止するために清浄度が重要です。CO2スノージェット洗浄装置のように、冷却と同時にドライ洗浄できることはインプラント器具の切削加工の用途では、大きな利点です。
アルミ系合金のような金属の切削加工にも適用できます。
写真:フライス盤でアルミ系被削材をエンドミルで溝切削加工 CO2スノーで冷却+ドライ洗浄
切削油フリーのドライ加工
写真:フライス盤でアルミ系被削材をドリル穴あけ加工 CO2スノーで冷却+ドライ洗浄
切削油フリーのドライ加工
関 連 情 報
ACP社製 CO2スノージェット洗浄装置をみる
なぜゴミや異物の問題がなくならないのかをみる
成形回路部品の製造工程でCO2スノー洗浄をみる
フラックス残渣をCO2スノーでドライ洗浄をみる