有機合成化学は、ポリマー合成から有機エレクトロニクスという幅広い分野でのマテリアルサイエンスの発展に大きく貢献しています。理化学研究所では、合成分子やそれらのナノ集合体を利用した、導電性バイオマテリアルの開発について最先端に研究を進めている研究ユニットがあり、この研究に不可欠な付属設備のひとつとして選ばれたのが、(米)Innovative Technology社のグローブボックスと有機溶媒精製装置です。
有機溶媒精製装置
InnovativeTechnology社の有機溶媒精製装置は、有機溶媒が含有している酸素・水分を短時間で安全に除去する装置です。 精製には、1種の溶媒につき2本のカラムが用意されています。カラムには酸素・水分を吸着するための触媒が充填されており、カラムを通過した溶媒の酸素・水分濃度は、数ppmにまで下がります。市販の無水溶媒も簡単にドライに精製できます。溶媒貯蔵用タンクから、不活性ガスで溶媒を液送して精製用カラムを通過させて酸素・水分を吸着させ、フラスコで採液するまでの流路は完全な密閉系になっています。理化学研究所に納入した装置では、ヘキサン・トルエン・ジクロロメタン・エーテル・THFの5種類の溶媒の精製のため同装置を使用しています(写真1)。
精製した溶媒の採液には、正面パネルの5方スウェージロックで行います(写真2)。交差汚染のリスクを回避して簡単に採液できます。フラスコ内を不活性ガスに置換してから採液する操作も5方バルブで行うことができ、操作は大変簡素化されており、かつ高い安全性を保持した設計になっています。
グローブボックス
グローブボックスは、酸素や水分と反応しやすい物質を取り扱う実験には欠かせない設備です。Innovative Technogyのグローブボックスは、酸素・水分濃度が1ppm以下の不活性ガス雰囲気をボックス内で保持する装置です。不活性ガス循環精製装置を標準装備しており、高純度の不活性ガス雰囲気をいつでもご利用できます。 納入した装置の写真です(写真3)。写真のボックス左横付けの冷凍庫は-35℃まで温度制御ができ、温度に敏感な材料を保管できます。冷凍庫には、グローブボックスの中から直接アクセスできます。溶媒トラップにより循環精製中に揮発性溶媒がカラムにダメージを与えない機構になっています。
ボックス内にステンレスパイプのバルブが5本搭載されています(写真4)。これは将来、有機溶媒精製装置とグローブボックスを接続して、有機溶媒精製装置で精製してドライになった溶媒を、グローブボックス内部で直接採液するため、予め搭載されました。
Innovative Technology の技術は、有機合成化学の最先端の研究をサポートしています。
☆Innovative Technology Inc は2015年にブランド再構築のため、新ブランド”Inert”を立ち上げました。