目次
アルゴンガスとは?
アルゴンガスマネージメントシステムの原理
アルゴンガスマネージメントシステムの特徴
アルゴンガスマネージメントシステムのオプション
アルゴンガスマネージメントシステムの用途
金属3Dプリンター(メタルAM/金属積層造形)の用途
PBF方式(粉末床溶融結合法)での用途
造形物の粉を払い落とす用途
その他、アルゴンガスマネージメントシステムの用途
SDGsが目指すゴールに貢献
関 連 情 報:
アルゴンガスとは?
大気は、窒素(N2)が78%、酸素21%、アルゴン他0.93%、その他、で構成されています。アルゴンガスは、無色・無味・無臭で、常温常圧下・高温高圧下でも、他の気体との反応性が極めて低い不活性なガスです。
アルゴンは、空気中に含まれている他の気体との沸点の違いを利用して、空気を低温に冷やして分離して抽出します。この製法では、ガスの冷却や圧縮機を使用する際にエネルギーを使い そして、空気中に0.93%しか含まれていないアルゴンは、購入時の価格が酸素や窒素ガスより高くなります。
アルゴンは、高温・高圧下でも不活性であることは、窒素ガスとの大きな違いです。
レーザー溶接やレーザーマーキングのような高温用途では、シールドガスに窒素を使用すると、窒化のような化学反応を起こしてしまうため、適用することが出来ません。このようなレーザー加工・溶接用途では、シールドガスとしてアルゴンガスを使用します。また、半導体用途では、スパッタリングや製膜用CVD(化学気相成長)のキャリアガスとしてアルゴンガスが用いられています。
アルゴンガスは、産業用途の不活性ガスとして広く利用されています。
アルゴンガスマネージメントシステムの原理
ユーザー様のアルゴンガスを充填したチャンバーと、アルゴンガスマネージメントシステム間の接続は、SUS配管2本(INとOUT)で接続します。
写真:右下にガスマネージメントシステム/グローブボックスと接続
アルゴンガスマネージメントシステムには、酸素・水分を吸着する触媒を収納したカラム(精製筒)を搭載しており、密閉容器・配管INから流れてくるアルゴンを精製筒へ送ります。そして、不活性なアルゴンガスが含有してる酸素・水分を触媒に吸着させてトラップして、アルゴンガスを低酸素・低露点にします。低酸素・低露点になったアルゴンガスは、配管OUTから密閉容器へ送り返します。
この循環プロセスを連続で行い、アルゴンガスをリサイクルして使用することが出来ます。
ガスマネージメントシステムの動画:
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アルゴンガスマネージメントシステムの特徴
アルゴンガスマネージメントシステムを接続した密閉容器・グローブボックスは、
アルゴンを流しっぱなしにするパージ式システムと比べて、アルゴンの消費量は極めて低くなります。エネルギー効率が高く、アルゴンガスのランニングコストを大幅に低減することにつながります。
システムの運転は、タッチスクリーン上で行います。ニューマチックバルブ・電磁弁・ブロア・真空ポンプ・内圧の上下限設定値入力は、タッチパネルで操作します。
オプションの酸素濃度計・水分濃度計を搭載したシステムでは、濃度(ppm)をタッチスクリーン上でモニタリングできます。
触媒が飽和した時は、再生ガスを使用して、再生して再び使えるようにします。この再生手順は、予め設定された再生プロセスに沿って自動運転で行われます。
アルゴンガスマネージメントシステムにより、アルゴンガスのランニングコストを大幅に低減することができ、流しっぱなしにしていたアルゴンガスを節約することが出来ます。
低酸素・低水分濃度のアルゴンガスを供給できるので、高純度のシールドガスにより、加工時のワーク表面を酸素・水分・窒素から遮断することができ、高品質の加工を行うことが出来ます。
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アルゴンガスマネージメントシステムのオプション
◆ジルコニア式酸素濃度計(揮発性有機溶媒を使う用途には適してません)
◆電気化学式酸素濃度計(揮発性有機溶媒を使う用途には適用できます)
◆水分濃度計
◆ヘリウム濃度計(アルゴン雰囲気下)
◆揮発性有機溶媒センサー
◆熱交換器(配管設置用/冷却水18L/minで約1000Wの冷却容量)
◆ドライポンプ(標準はロータリーベーンポンプです)
◆揮発性有機溶媒トラップ
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アルゴンガスマネージメントシステムの用途
金属3Dプリンター(メタルAM/金属積層造形)の用途
◆PBF方式(粉末床溶融結合法)での用途
PBF方式のような金属3Dプリンターでは、原料の金属粉末をレーザーで積層して造形します。このようなレーザー加工は、アルゴンガス雰囲気下で行います。
レーザー発振器を内蔵したチャンバーへ供給するアルゴンガスを、アルゴンガスマネージメントシステムで循環・再利用することが出来れば、アルゴンガスのランニングコストを削減することになります。
また、アルゴンガスマネージメントシステムで低酸素・低露点に精製したアルゴンガスをチャンバーへ供給することは、レーザー加工時の不良率削減・高価な金属粉末の材料ロスを削減することにつながります。
写真:金属3Dプリンターでチタン製品を造形
◆造形物の粉を払い落とす用途
金属3Dプリンターでできた造形物の表面には、微小な金属の粉が残っていることがあります。人体に有害な金属粉を原料に使用している場合は、表面に残った粉を払い落とすときも、厳重な注意が必要です。
このために、特別に設計されたグローブボックスがあります。「パウダーシールド」という商品名で、低酸素・低露点のアルゴンガス雰囲気下で、造形物の粉を払い落とす作業を行うための専用グローブボックスです。
写真:パウダーシールド/右下にアルゴンガスマネージメントシステム
刷毛やガンで、造形物の粉を払い落としても、粉を吸引して吸引暴露するリスクを無くしています。また、作業中に静電気が発生しても、低酸素濃度の雰囲気下なので、粉塵爆発の3要因の一つ、酸素を除去しているので、粉塵爆発のリスクを最小限にしています。
パウダーシールドには、アルゴンガスマネージメントシステムで循環精製したガスを使用する使い方があります。この方が、ボンベや施設から供給するアルゴンガスをボックスへパージするよりも、もっと低酸素・低露点のアルゴンガスを供給することが出来ます。
動画:パウダーシールド
その他、アルゴンガスマネージメントシステムの用途
◆リチウムイオン二次電池
◆OLED
◆半導体
◆薄膜太陽電池
◆化学・高分子
◆医療・製薬
◆航空機用部品
◆自動車用部品
◆原子力
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SDGsが目指すゴールに貢献
SDGs(Sustainable Development Goals / 持続可能な開発目標)は、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されています。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す17のゴール・169のターゲットから構成された国際目標です。
SDGsには、つぎのような目標と、それを実現するためのアプローチが記載されています。
SDGs ゴール7:
エネルギーをみんなに そしてクリーンに
ターゲット 7.3:
2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
SDGs ゴール9:
産業と技術革新の基盤をつくろう
ターゲット9.4:
2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
ゴール7は、すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保することを目標にしており、エネルギーを無駄なく効率よく使う取り組みは、ゴール7と大きく関連しています。
ゴール9は、2030年までに、資源をよりむだなく使えるようにし、環境にやさしい技術や生産の方法をより多く取り入れて、インフラや産業を持続可能なものにすることを目標にしています。
そして、
アルゴンガスマネージメントシステムは、人工的に製造したピュアなアルゴンガスを、効率よく・循環・リサイクルするためのシステムです。アルゴンガスのリデュース、リユーズ、リサイクルにつながります。これは、SDGs ゴール7・ゴール9が掲げるゴールと大きな関連性があります。
アルゴンは、空気中の0.93%を占める気体です。空気中にあるアルゴンですが、産業用途で使えるようにするためには、不純物を取り除いてピュアなアルゴンガスにする製造プロセスを経て作られていきます。人工的にアルゴンガスを製造して、濃縮するプロセスは、エネルギーを多く使います。だから、アルゴンガスを無駄なく効率良く使うことには大きな意味があります。
関 連 情 報
ガスマネージメントシステムのラインナップ
窒素ガスをリサイクルするエネルギー効率が高い循環型システム
金属粉末を取り扱うための密封容器とガスマネージメントシステム
金属3Dプリンター / アルゴンガスをリサイクルする循環型システム
ガスマネージメントシステムを接続したグローブボックスの用途はこちらから。