
このページは、プラズマ処理を主とした「表面処理」の仕組みを解説しています。
表面処理の目的は、プラスチック、ゴム、金属などの表面を改質し、接着性や親水性を向上させることです。
コロナやフレーム処理もすべてプラズマに関係しており、「物質の第4の状態」であるプラズマを表面に当てることで
親水性の官能基を付与し、接着力を高めます。有機物洗浄や表面粗面化の効果も併せて実現します。
これにより、脱プライマー・脱溶剤が可能となり、SDGsにも貢献する技術です。
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目次
表面処理装置の種類

表面処理を大きな範囲で見てみるとメッキやDLCなどの加工技術も含まれますが、ケー・ブラッシュが扱う表面処理は、プラスチックやゴム、金属表面の有機物クリーニングや接着性などの親水性を向上させることを目的としたプラズマ処理などを指しています。
この親水性を目的とした処理をさらに細分化すると、2種類の方法に分類できます。
①薬品やブラストなどを用いて物理的に表面状態を変化させ、表面積を増やす事で物理的な接着効果(アンカー効果)を狙った処理方法。(※一部の表面処理でも同じような効果を狙った処理があります)
②大気圧や真空などのプラズマ処理やUV処理、フレーム処理など官能基によって科学的結合を変化させて接着効果、密着効果を狙った処理方法。
ケー・ブラッシュでは②番の設備をメインに扱っております。
全部プラズマ?
ケー・ブラッシュ商会が扱っているコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの全ての処理装置は、基材表面を化学的に改質することを目的としています。
呼び名は違いますが、実は全てプラズマに関係しています!
そもそもプラズマとは?
この世にある全てのものは、原子と呼ばれる、非常に小さな粒の集まりによってできています。
この原子は、原子核とその周りを回っている電子から成っていて、さらに原子核は、プラスの電荷を持つ陽子と、
電荷を持たない中性子から成り立っています。

物質にエネルギーを与えつづけると、温度が上昇し、固体から液体、液体から気体になりますが、さらにエネルギーを供給し続けると、気体の分子が離脱して原子になり、原子核の周りを回っていた電子が離れ、プラスの電荷を持つイオンとマイナスの電荷を持つ電子に分かれます。
このように、分子がイオンと電子に分かれている状態をプラズマといい、物質の第4の状態とも呼ばれています。
自然界ではオーロラ・稲妻・太陽などがプラズマです。
宇宙を構成する物質の99%以上がプラズマであると言われています。
人工のプラズマは、放電現象として、蛍光灯などの照明器具やプラズマ処理機などの加工技術として利用
されています。
太陽
稲妻
オーロラ
プラズマの発生方法
物質を電離させる、つまりイオンと電子に分離させることによってプラズマを得ることができます。電離させるために必要なエネルギーの供給方式により3つに分けられます。
1:放電 (コロナ処理やプラズマ処理)
2:熱電離(フレーム処理)
3:光電離(UV処理)
空気中で放電することにより、空気中の酸素分子が解離し、酸素原子が励起して 酸素イオンや自由電子を含むプラズマが発生します。 発生したプラズマの電子・イオン・ラジカルが基材表面に接触します。 基材表面の分子とプラズマ中のイオン・電子が反応、親水性官能基がプラスチックやゴム表面に生成されます。 表面活性化が行われ、接着性やぬれ性が向上します。 (=分子間力、ファンデルワース力の働き)
親水性が向上する理由
官能基の付与
ポリプロピレン・ポリエチレンなど特にオレフィン系の合成樹脂は表面に極性基が無く、接着剤やインクなどに対して 親和性がありません。
放電により放出されたイオンや電子が樹脂表面の分子の化学結合を切断し、樹脂の種類に応じて親水性の官能基 OH(水酸基)・CO(カルボニル基)・COOH(カルボキシル基)等が生成されます。
主な官能基の種類

表面処理で接着性が向上する理由
表面洗浄、有機物除去によるクリーニング効果
プラズマ中で物質は非常に活発でエネルギーが高く、他の分子と容易に反応する性質になっています。この性質を利用し、金属やプラスチック、ゴム表面上の有機汚染物質の洗浄を行います。
金属の親水性向上においては表面洗浄によって金属が元々持っている濡れ性を引き出すことをによって達成されます。
表面粗面化
プラスチックやゴム表面を適度に荒らし、十分な表面積を確保することで接着性や密着を高めます。
表面活性化
放電のエネルギーや放出された電子により、基材表面分子間の化学結合が切断され、フリーの親水性官能基が生成されます。
活性化された表面に生成した官能基と反応する官能基を有する接着剤やプライマー、コーティング材で新たな化学結合を起こし、接着性や密着力を高めます。
表面処理による変化
表面処理前
表面処理後
出典:http://www.pink.de
まとめ
処理基材の表面エネルギー値や濡れ性を向上させることが、接着性や密着性、印刷性を良くするための重要な条件です。
相手の基材の表面張力や表面エネルギー値などを考慮し、適切なインキ・プライマー・接着剤等の選択を
する必要があります。
これら設備を用いたデモテストやサンプル作成も承っております。お気軽にお声がけください。
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プラズマ処理をはじめ、各種表面処理装置を導入することで脱プライマー、脱溶剤といった作業環境、作業効率の改善、そして自然環境を配慮したモノづくりへの転換を図ることができます。
表面処理の導入によるSDGsへの貢献
プラズマ処理などの表面処理装置の導入は、脱プライマーや脱溶剤といった改善を通じて、作業環境や効率を改善し、持続可能なモノづくりへの転換を図ります。
(ターゲット 3.9) 有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
(ターゲット 8.2) 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
(ターゲット 9.4) 資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。
(ターゲット 12.4) 環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。





