
除電器・イオナイザ、どれを選べばいい?
製造現場では、ガラスクロス・フィルム・枚葉シート・樹脂・電子部品など、さまざまな製品で静電気によるトラブルが発生します。
しかし、除電器・イオナイザには複数の方式があり、 「どの方式を選べばよいのか分かりにくい」 ことも少なくありません。
除電器は単純な除電能力だけではなく、 エアー使用の可否・設置距離・イオン供給量・イオンバランス・用途・ランニングコスト などを確認して選ぶことが重要です。
静電気が発生する仕組みや、除電器以外の静電気対策については 製造現場の静電気|静電気を除去する方法 でも詳しく紹介しています。
まず結論!用途から選ぶ4つの除電方式
ガラスクロス・フィルム・枚葉シート・クリーン環境・樹脂など、 エアーブローを使用せずに静電気を除去したい用途に適しています。
エアーの気流にイオンを乗せることで、離れた位置までイオンを輸送できます。 除電とエアーブローを同時に行いたい用途にも適しています。
半導体・IC・電子部品・液晶など、 高いイオンバランスが求められるESD用途に適しています。 イオンを対象物まで輸送するため、エアーを使用します。
電源を使用しない自己放電型の静電気対策です。 フィルム・紙などの簡易的な静電気対策に使用でき、 ランニングコストはほぼゼロです。
除電器・イオナイザ4方式を比較
代表的な4方式を比較しました。 エアー・除電距離・イオン供給量・イオンバランス・ESD用途・ランニングコスト を見ることで、用途に適した方式を絞り込みやすくなります。
| 方式 | エアー | 得意な用途 | 除電距離 | イオン供給 | イオンバランス | ESD用途 | ランニングコスト |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| パルスDC | ◎ 不要 | ガラスクロス・フィルム・枚葉シート・紙・クリーンルーム・樹脂成型品 | ◎ 遠距離 | ◎◎ 非常に多い |
△~○ | ○ | ◎ ほぼ電気代のみ |
| AC/ パルスAC |
○ エアー併用が有効 |
一般除電・除電ブロー・広幅材・ゴミ/ホコリの吹き飛ばし | エアー無 近距離 △ エアー有 遠距離 ○~◎ |
○ 多い |
○ | ○ | △ エアー使用時は 高くなる |
| 高周波AC | △ 必須 | 半導体・IC・電子部品・液晶・精密デバイス | ○ エアーにより輸送 |
○ 中程度 |
◎ | ◎◎ | △ エアーを使用 |
| 除電ブラシ/ 除電ひも |
◎ 不要 | フィルム・紙・簡易的な静電気対策 | △ 近距離 |
― | ― | △ | ◎◎ ほぼゼロ |
上記は一般的な選定目安です。 ワークの材質・帯電量・搬送速度・設置距離・周囲環境・要求する残留電位などによって、最適な除電方式は異なります。
🌿 CASE 01 風を当てずに除電したい
パルスDCイオナイザ
パルスDCイオナイザは、プラスイオンとマイナスイオンを交互に生成し、パルス状に放射する方式です。
大きな特長は、 エアーブローに頼らず、離れた位置まで大量のイオンを供給できること です。
ガラスクロス・フィルム・枚葉シート・樹脂など、高く帯電しやすい材料の静電気対策や、エアーを使用したくないクリーン環境などに適しています。
✓ ガラスクロス
✓ フィルム・ウェブ
✓ 枚葉シート
✓ 樹脂・プラスチック
✓ クリーンルーム・クリーンブース
✓ 高帯電物の静電気対策
ガラスクロス・フィルムなどの高帯電物にも
ガラスクロスやフィルムなどの絶縁材料は静電気を帯びやすく、製造工程では高い帯電電位になることがあります。
パルスDC方式は、大量のイオンを広い範囲へ供給できるため、このような高帯電物の静電気対策に適しています。
フィルムの巻取り工程では、巻取り前に静電気を除去することで、巻取りロールへの帯電蓄積や、ゴミ・ホコリの静電付着を抑制します。
エアーブロー不要。クリーン環境にも
パルスDCイオナイザは、除電のためのエアーブローを必要としません。
そのため、製品へ無用な気流を当てたくない工程や、クリーンルーム・クリーンブースなどの静電気対策にも使用できます。
コンプレッサーエアーを使用しないため、運転時のランニングコストは ほぼ電気代のみです。 定期的な放電針の清掃は必要ですが、エアーを使用するイオナイザと比較して運転コストを抑えることができます。
💨 CASE 02 除電しながらゴミ・ホコリも吹き飛ばしたい
AC/パルスACイオナイザ
AC/パルスAC方式は、製造現場で幅広く使用されている汎用的な除電方式です。
対象物との距離が近ければ、エアーブローなしでも静電気を除去できます。
一方、対象物までの距離が離れる場合は、 生成したイオンをエアーやファンの気流に乗せて輸送 することで、離れた場所や広い範囲を除電できます。
✓ 一般的な製造工程の静電気対策
✓ 樹脂成形品
✓ パーツフィーダー
✓ 広幅フィルム・紙
✓ 塗装前の静電気除去
✓ 除電+エアーブローを同時に行う工程
パーツフィーダーなどを広範囲に除電
ファンやブロアによる気流を利用すれば、イオンを広い範囲へ輸送できます。 パーツフィーダー内で摩擦帯電した樹脂部品など、広い範囲に分散したワークの静電気対策にも使用できます。
除電+エアーブローを同時に
塗装前の樹脂部品などでは、静電気を除去すると同時に、表面に付着したゴミ・ホコリをエアーブローしたい場合があります。 AC/パルスAC方式は、このような 「除電+エアーブロー」 の用途にも適しています。
🔧 特殊な形状・用途にも対応するACイオナイザ
ACイオナイザには、一般的なバー型だけでなく、製造工程やワーク形状に合わせた特殊なタイプもあります。
医薬品・食品など特殊な衛生環境では、過酸化水素ガスによる洗浄に対応した特殊な静電気除去バーが求められることがあります。
滅菌消毒対応除電バーをみる
⚡ CASE 03 半導体・電子部品のESD対策をしたい
高周波ACイオナイザ
半導体・IC・電子部品・液晶などの製造工程では、単純に「静電気が取れればよい」とは限りません。
高周波ACイオナイザは、プラス・マイナスのイオンを高いバランスで供給できることが特長です。
そのため、静電気に脆弱な電子デバイスなど、 高いイオンバランスが要求されるESD対策 に適しています。
✓ 半導体
✓ IC
✓ 電子部品
✓ 液晶
✓ 精密デバイス
高周波ACイオナイザでは、生成したイオンを対象物まで輸送するために エアーを使用します。 高いイオンバランスを活かしながら、必要な場所へイオンを供給します。
💰 CASE 04 まず低コストで静電気対策したい
除電ブラシ・除電ひも
除電ブラシと除電ひもは、電源を使用しない 自己放電型 の静電気対策です。
帯電したワークの近くに設置し、アースへ接続して使用します。 電源装置を必要としないため、シンプルかつ低コストで導入できます。
✓ 電源不要
✓ 構造がシンプル
✓ 導入コストを抑えやすい
✓ ランニングコストはほぼゼロ
✓ フィルム・紙などの簡易的な静電気対策
自己放電型は、帯電したワークとの電位差を利用して放電します。 ワークとの距離が離れると、除電効果は低下します。
できるだけワークの近くへ設置する必要があり、高帯電物や高精度な静電気管理では、電圧印加型イオナイザの方が適している場合があります。
除電ブラシは、フィルム・紙・樹脂シートなどの簡易的な静電気対策に使用できます。
🎯 迷ったら用途から除電器を選びましょう
除電方式の選定に迷った場合は、 「エアーを使えるか」「除電と同時にゴミを吹き飛ばしたいか」「ESD対策が必要か」「コストを優先するか」 を確認すると、候補を絞り込みやすくなります。
ガラスクロス・フィルム・枚葉シート・樹脂・クリーン環境など、エアーブローを使用せずに大量のイオンを供給したい用途に適しています。
イオンをエアーの気流に乗せて輸送し、静電気除去とエアーブローを同時に行いたい工程に適しています。
除電後の残留電位やイオンバランスを重視する、半導体・IC・電子部品・液晶などの静電気対策に適しています。
電源不要で、フィルム・紙などの簡易的な静電気対策に使用できます。 ランニングコストはほぼゼロです。
🔎 静電気対策をもっと詳しく知りたい方へ
静電気の発生原因や、フィルム・樹脂など具体的な工程での対策については、関連ページでも詳しく紹介しています。
💡 静電気を「除去する」だけでなく「発生させにくくする」
静電気は、製品同士や治具との 接触・剥離 によって発生します。
そのため、製品へ触れずに搬送・保持する 非接触ハンドリング も、接触・剥離による静電気の発生や、異物転写のリスクを抑えるための選択肢のひとつです。
非接触搬送・非接触チャックについては、下記の関連ページで詳しく紹介しています。
❓ 除電器・イオナイザのよくある質問
除電器・イオナイザの方式や選び方について、よくある質問をまとめました。
Q1. 除電器とイオナイザの違いは何ですか?
製造現場では、「除電器」と「イオナイザ」はほぼ同じ意味で使われることがあります。 イオナイザはプラス・マイナスのイオンを生成し、帯電した対象物へ供給することで静電気を中和する装置です。
Q2. ACイオナイザとパルスDCイオナイザの違いは何ですか?
AC方式は交流電圧を利用してプラス・マイナスのイオンを生成します。 近距離の除電や、エアーを併用した除電ブローなど幅広い用途で使用できます。 パルスDC方式は大量のイオンを供給しやすく、エアーブローを使用せずに離れた位置までイオンを届けられることが特長です。フィルム・紙・ガラス・樹脂のように強く静電気を帯びる基材を除電するのに適しています。
Q3. エアーを使わずに静電気を除去できますか?
はい。 パルスDCイオナイザは、除電のためのエアーブローを使用せずに運転できます。 ガラスクロス・フィルム・枚葉シート・樹脂・軽い基材・クリーンルームなど、風を当てずに静電気を除去したい用途に適しています。
Q4. 除電器は対象物からどのくらい離して設置しますか?
適切な設置距離は方式や機種によって異なります。 AC/パルスAC方式はエアーなしでは近距離での使用が基本ですが、エアーを併用するとイオンを遠距離まで輸送できます。 パルスDC方式は、エアーなしでも比較的離れた位置から除電しやすい方式です。
(例:スマートイオン100D の場合、バーから100mm~600mmの距離へエアーを吹かずにイオンを放射します)
実際の設置距離は、対象物の帯電量や搬送速度なども含めた上で、適したモデルを選定します。
Q5. フィルムやガラスクロスにはどの方式が適していますか?
フィルムやガラスクロスなど、高く帯電しやすい絶縁材料にはパルスDC方式が適しています。 大量のイオンを広い範囲へ供給でき、エアーブローを使用せずに除電できることも特長です。
Q6. 半導体・電子部品のESD対策にはどの方式が適していますか?
半導体・IC・電子部品・液晶など、イオンバランスを重視する用途では高周波ACイオナイザが適しています。 除電後の残留電位を低く抑えたいESD用途で使用されます。
同じ「静電気を除去する」という目的でも、ワークの材質・帯電量・設置距離・エアー使用の可否・搬送速度・要求するイオンバランスなどによって、適した方式は異なります。 用途や工程条件に合わせて、最適な除電方式を選定することが重要です。




